新・こだわり派宣言 「新」にこだわる

観光ドライバーの春開く

 4月は新1年生の季節。桜開花のこの時期は、京都の観光タクシーにとっても新学期に当たる。観光ドライバー1年生が修学旅行生らを乗せて街を走り出す一方、新たに資格取得を目指すドライバーの研修が始まる。京都市にあるタクシー会社を訪ねた。
 「壬生寺は、境内に駐車場がないことを忘れずに。新撰組の屯所があったのはこちら。二条城のこの部屋は1回に入れる人数が10人まで…」。社内の研修室で、京都の観光ビデオを見ながらドライバーたちを前に指導する今井利一さんは、入社22年のベテランだ。鋭い指摘の数々に、受講者たちは真剣にメモを取る。
 年間5000万人を超す観光客が繰り込む京都は、観光タクシーの激戦地だ。ドライバーにとってはお客様の安全な送り届けが基本だが、観光案内の知識とサービス、身だしなみやマナーも問われる。競争に勝ち「観光ならあの会社、あのドライバーを」と指名されるようになるには、社内の研修態勢とドライバー個々の研鑽が欠かせない。 
 今井さんの会社では上からA、B、一般と3ランクに分けて養成を続けている。全社約300人のドライバーのうち、Aランクは40人ほど。団塊世代以上の年代がその約7割を占める。「うちは京都、奈良、滋賀を一体にした観光案内サービスを心がけているので観光ドライバーは幅広い知識が必要です。現場では、知識を押し売りせず、お客様が何を求めているかを正確に見抜いた案内とサービスが肝心です」。今井さんは、Aランクドライバーの条件として向上心を強調する。 
 昇級試験は2月と8月にあり、Aランク合格は毎回3人ほどにすぎない。「六波羅蜜寺のご本尊の名は」。ことし2月の試験問題はどれも難度が高く、Aランク合格(80点以上)は京都検定2級以上の実力があるという。ただ、合格にあぐらをかいていると他に遅れてしまうのがこの世界。新しい観光知識の吸収が欠かせない。社内には会社の定期研修とは別に、自主研修の同好会「史跡勉強会」(40人)がつくられ、志あるドライバーたちが定期的に座学や現地踏査を重ねている。
 奈良県内で3月初旬に開いた史跡勉強会に参加したドライバーの一人、上坂克美さんは昇給試験に合格したばかりのAランク1年生。「歴史が好きなので、この仕事にやりがいがあります。お客様との会話をもっと磨きたい」と話す。こうして運転手同士、会社同士の健全な競い合いが続けば、京都観光はより魅力的に成長していくに違いない。

■取材協力/京聯自動車(株)


■キャプション
(1)観光客を案内する観光ドライバー。知識とともにマナーや身だしなみも要求される
(2)現地研修の出発前、会社で打ち合わせするドライバーたち
(3)現地研修では何がどこにあるかを、頭に入れておかねばならない
(4)ここではお客さんにどう説明するか?話し合いにも熱がこもる現地研修
(5)奈良で現地研修する観光ドライバーたち(左・東大寺、右・薬師寺)
(6)観光地の紹介ビデオ見ながら本社内で研修する観光ドライバーたち
(7)観光ドライバー研修で指導員を務めている今井利一さん


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