仏具彫刻師 冨田工藝

仏具彫刻師
冨田工藝 冨田 睦海・珠雲 (とみた むつみ・じゅうん)さん



「手を合わせてもらうものを守りたい」。
兄弟で仏具彫刻師という冨田さんご兄弟にお話をうかがいました。

 清水焼で有名な五条通りの一角。ガラス越しに製作途中の仏像が飾られています。「仏像を作っているところなんて見たことないでしょ? それを知ってもらいたくて、2年前、この場所に工房をオープンしたんです」と、冨田工藝3代目の睦海さん。京都で唯一という位牌を作る職人さんでもあります。




 冨田工藝の本店は伏見区。睦海さんの兄二人も仏具に携わる職人で、長男は刻字、次男の珠雲さんは仏像彫刻、三男の睦海さんは位牌製作を得意としているそうです。「小学生の時、父が兄弟三人を並ばせて、『彫ってみろ』って木と刀を渡してきたんです。その時のことはみんなはっきり覚えてます」と珠雲さん。学生の頃から工房に入り、掃除や刀研ぎを始めた二人。「当時は何でこんなこと、と思ってました。でも今思うと、落ちている木屑でその人がどんな作業をしていたか分かるし、刀を研ぐことが何より一番大事だったんです」。この経験で、彫刻で最も重要な、刀によって違う微妙な研ぎ具合を覚えたという睦海さん。兄弟共に大学へ進学する頃には、工房に入って本格的に仕事を任されるようになったと言います。

 新しい職人が育つ環境が整備されていない」。修業時代、兄弟全員が感じていたことでした。近年、その手頃感から外国製に市場を奪われている京仏具。京都の職人が作っても高くて売れない、だから職人も減っているという現状なのだそう。「仏具彫刻の仕事がしたいという人は多いのに、弟子を取るだけの受け皿がない。せめてうちだけでも協力できれば」(睦海さん)。やりたい気持ちがあるのに職場がない。この現状を変えていかなければ京仏具がだめになる。「仏像や仏具は人様が心をこめて手を合わせるもの。本物を守っていかないと」。これまでの、そしてこれからの伝統を守ることが役目と言います。

 「閉鎖的な職人の世界ですが、工房を開いてからいろんな職人さんと知り合いました。京都のいろんな分野の職人で現代の仏像を作って、若い力を見せられれば」という珠雲さんは、東京での展示会の準備に忙しく動いていました。睦海さんも、趣味で作っていた仏具のデザインをモチーフにしたアクセサリーが噂になり、もうすぐ一般に発売されるそうです。広い視野で京都の職人の世界に新風を吹き込む二人。「いつか兄弟で仏様の本当のお姿とされる『丈六仏』を作りたい」。職人としての伝統を守るために、兄弟の挑戦は続きます。




■睦海さん製作のアクセサリーブランド「睦海」




■「多くの人を救えるようにと指の間に水かきがあります。これをいかに美しくみせるかが難しい」(睦海さん)


■スケジュール
9:30/出社。
10:00/工房オープン。仏像や仏具の修理も行っているので、依頼のあったお寺に引き取りに行く。中には国宝級のものもあるそう。一日中、工房で作業していることもある。
20:00/工房閉店。集中力を高めるため、閉店後に黙々と製作に取り組むことも。

■経歴
1998年/学生のころから兄弟で工房に入る。珠雲さん、大学時代から職人として働き、卒業とともに冨田工藝に入社。
2000年/睦海さん、大学を卒業し、兄と同じく職人として入社。
2004年/五条坂に工房をオープン。
2006年/仏像彫刻の教室を始める(現在は水曜18~21時、日曜13~18時の週2回開催)。
2007年/東京にて仏像の展示会開催予定(日程は未定)。睦海さん、春から東京でアクセサリーを販売予定。(現在、オープン工房五條坂でも一部販売中)。


寺院佛具製作 冨田工藝
オープン工房五條坂
〒605-0846
京都市東山区五条橋東2丁目36-2
tel・fax/075-541-0123
※CIAO MAGAZINE 2007年3月号より抜粋
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