木工家  戸田直美さん

木工家  戸田直美さん


ヒトとヒト、ヒトとハコをつなぐ、 めざすは『楽しく幸せな木工家』


「力仕事で手も荒れそう」。木工と言うと、どちらかというと男性の仕事のようなイメージがあるかもしれません。でも最近、女性の木工家が増えているそうです。東福寺にある工房でマイペースに家具作りをされている『potitek/ぽちてっく』の戸田さんに、モノ作りの魅力についてお話を伺いました。


―工房を始めたきっかけは?
 大学時代は漆工科の木工コースでした。その学生時代にアルバイトしていたバーで知り合った仲間たちが、共有アトリエT―roomのメンバーを探していて、まぜていただいたんです。卒業して最初は、漆の工房に1年弱弟子入りし、独立後はT―roomを拠点に木工活動しています。

―いろんな人が集まる
 工房なんですね
 木工家の他に、美術家、建築家、デザインの方がいて、『共有アトリエ』という呼び方をしています(T―roomより)。お金を払って一緒に借りる、使うだけの『共同』だけじゃなくて、意識的に『共有』することで、それぞれの持ち味を活かしてお互いにプラスになるようにできればいいなぁと思ってやっています。

―モノ作りに対するこだわりは?
 その空間にすっぽり納まる家具を作りたい、と思ってます。芸術の専攻だったので、昔はそれだけで独立して作品になるようなものを作りたい、と思ってました。でもそれだけではないんですね。一番最初の仕事がカフェ、バーでもある骨董屋さんで、器を美しく見せることだけに集中してほしい、と言われたんです。なので、自分なりに一生懸命考えて、すごく削ぎ落とした普通の椅子を作ったら、すごくいい空間になってめちゃくちゃ喜んでもらえたんですよ。調和したというのか。その時、奇をてらったりしなくてもこんなにいい感じになるんだな、というのがわかって勝手に自信がついて、全体的な『空気』を作りたいと思うようになりました。シンプルで普段使いができるもの、それでいていつもの生活を新鮮にしたり、何かちょっと居心地のいい空間にするようなもの、というのがこだわりですね。

―家具作り以外にも活動されてるんですか?
 一点ものの高級家具を作って納める、ということに疑問を持っていた時期に、たまたま一般の人向けのワークショップの依頼があったんですよ。手軽に愛着をもって作れるもの、ということでスプーン作りにしたんですが、いろんな人を巻き込んでやりたい、と思って、木工関係の職人さんや、大工さん、仕事で知り合った人たちに手伝ってもらって始めました。それがもう4年くらい前のことで、それ以降スプーン教室は継続的にやってますね。9月24日には『にちようおやこ教室』というところで子ども向けに木のマドラー作りを開催します。

―今後の戸田さんは?
自分のフットワークの軽さを活かして人と人をつなぐ活動、教室ももっとやっていきたいですね。
持ち運びのことなどを考えると、本当は決まった場所でやる方が準備も助かるんですが、自分の性格的にそれでは物足りなくなると思うので、いろんな場所を転々としながらその場の人たちと空間、時間を作り続けられたら楽しいだろうなって思ってます。

―最近ご結婚されたとか
 そうなんですよ。だからこれからいろいろ変化はあるだろうけれど、今までやってきたことを活かして続けられるように工夫したいな、と思ってます。現在、自宅を改装をして小さなアトリエを作って、小さな作業をできるように準備をしていってます。結婚して子どももいて木工をやってる女の人って私の身近にはあまりいないので、自分ができたら、と思って。特にスプーン教室は細々と続けたいと思っていてます。今のところ季節ごとに1回のペースですが、月に1回くらい自宅の工房で、4、5人でこじんまりやることも考えています。主人は飲食店で働いていて、2人とも飲むこと、食べること、人が集まるところが好きなので、気さくな居酒屋をすることが当面の目標なんですけど、そのときの家具は私が作りたいですね。

○人生の転機
=弟子入りをやめて独立したとき=
いろんなイベントごとが好きで、仲間にも助けてもらっているという戸田さん。でも、最初に入った尊敬する漆芸家具の工房は、それとは相反し内にこもって追求する世界で、結局、性格が災いしてか、運命か、破門のような形で辞めることになってしまったそうです。そのとき真剣に「自分はどうしたいのか」ということを考え、自分で木工をやっていこうと決断したことが、いくつかある転機の中でも一番大きいものだったとか。「やめるか自分で勝手にやれ」と言われたときはすごく辛かったそうですが、結果的に「それでよかった」と言えるのは、今、木工の世界でやりたいことを実現できているから、ではないでしょうか。

■プロフィール
1976年、兵庫県生まれ。2001年、京都市立芸術大学大学院漆工専攻修了。漆芸家具工房を経て東福寺の共有アトリエT-roomのメンバーとなり、独立して木の工房potitekを始める。主にオーダー家具のデザインと制作を行い、スプーン教室も各地で開催中。現在、京都造形芸術大学環境デザイン学科非常勤講師。

【Potitek/ぽちてっく】
京都市東山区本町12-218 T-room
TEL・FAX/075-532-0906
http://www.potitek.com
※CIAO MAGAZINE 2006年7月号より抜粋
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