「涼」にこだわる

 鴨川右岸に小麦色の帯が走る。納涼床に張りめぐらされるすだれの列。二条大橋から五条大橋辺りまで縦に続き、一本の涼線を形づくる。京の夏に、なくてはならぬ演出だ。
 王朝時代の宮中寝殿にかけられた御簾(みす)が原型とされる日本のすだれは、手編みの「京すだれ」をもって最高級とする。むきだしのコンクリート壁やアルミサッシ窓も、京すだれが一枚かかるだけで風情と涼味が加わり、無機質や殺風景は一気に和む。
 すだれの材質には竹とヨシ、ほかにガマ(蒲)などもある。かつては、青竹を細く割った青すだれが多かったが、いまはほとんど見かけない。納涼床の鮮やかな小麦色は、ヨシすだれが生み出す。澄んだ色合いを出すために、倉庫で数十年寝かされるヨシ材もあるという。
 目隠しになって日差しを遮り、風をよく通せば、合格点とされるすだれだが、本場の京都ではそうはいかない。見た目に涼やかで、清々しく、色合いよく仕上がっていなければ満足しない。京都人の「涼」へのこだわりだろう。日に焼かれ茶褐色に変じたすだれでは、同じ納涼床でも足を入れるのをためらってしまう。
 庶民の暮らしに、すだれがなじんだのは、室町時代といわれる。以来、ざっと700年。京の街々で今も利用されるのは、近隣との関係で重宝するからだ。家の内を開け放っても、すだれ一つで外からは見えず、内からは外が透けて見える。軒を接するご近所と、プライバシーを守りながら、ほどほどの間合いで付き合ううえで、これほど有用な生活具はない。
 「簾(すだれ)越しなればつくづくと見つつあり」は、加藤楸邨の秀句。じっとりとした暑さの季節、すだれがもらたらす涼に身を委ねてみたい。

■写真キャプション/暮れ時の鴨川納涼床。すだれとぼんぼりの灯が情趣を盛り上げる。


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