新・こだわり派宣言 「迎」の心を伝える

新・こだわり派宣言 「迎」の心を伝える
いもぼう 平野家本家 女将 北村明美さん


 老舗料亭の女将として、お客さんを迎える姿勢は、あくまで自然体。「気持ちよく過ごされ、気持ちよくお帰りいただくのが、おもてなしです。格式ばったお迎えでは、お客様が緊張するだけ。気楽に過ごしていただけるよう、ゆったりと笑顔でお迎えして、笑顔でお送りしなければ…」。
 享保年間(一七一六〜一七三五)に現在の円山公園内で創業したいもぼう平野家本家は初代が考案した海老芋と棒鱈でつくる料理「いもぼう」で知られる。名高いこの料理は一子相伝。当代は十四代に当たる。店内は、お客さんを迎えるための“しつらえ”にこだわっている。テーブル席のほか五室ある座敷には活花や軸、几帳など四季に応じた“しつらえ”が施され、祇園・円山地域ならではの風情でお客さんを包み込む。
 先代の二女に生まれた明美さんは大学卒業後、若女将を経て二十年前から女将を務める。身だしなみは「お客様より派手な着物は控える」を守ってきた。お客さんを萎縮させるような迎え方はしたくないからだ。接客で大切にしているのは笑顔ともう一つ。聞かれて「知らない、判らない」とは答えないこと。京都の地理や乗り物、買い物案内など、お客さんからは様々の質問がある。「せっかく京都に、おいでになったのに、地元の私たちが知らないでは心許ない。精一杯、知るように努力して、それを外には見せず、できるだけ何にでもお答えできるようにする。おもてなしは、やっぱり真心です」。
 帳場には、すぐ答えられるよう観光案内本や時刻表などをたくさんそろえている。五年前、店の周辺の観光案内地図「いもぼうマップ」を独自に製作したのも、そんな心遣いから。今ではコピーして店内に置いておくと、すぐに無くなる超人気の地図になった。
 明美さんを可愛がってくれた先々代(祖父)の口ぐせは「ほんまもんを見なあかん」だったという。「茶碗一つでも、材質が陶器なら落とせば割れる。プラスチックなら割れない。陶器や漆椀のような、ほんまもんの素材を使った器や道具は美しく品もよい。でも『しっかり見て触ってから使いや』と教えてくれました」。老舗が守るおもてなしの心は、こうして女将の胸に深く刻まれた。「私が引き継いだ知恵と経験を、さらに磨いて次の世代に申し送りたいと思います」。

■取材協力/いもぼう平野家本家
住所/京都市東山区円山公園
TEL/075(525)0026(店舗)
■写真キャプション
(1)いもぼう・石畳のエントランス
(2)客席はしつらえを重視。これはお正月用の「ヒカゲカズラ」の床の間飾り
(3)客席から望む坪庭
(4)店内から屋根へ突き抜ける名物の椋の木
(5)落ち着いたたたずまいの、いもぼう平野家本家店内
(6)円山公園の木立の中に立ついもぼう平野家本家


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