とうふ師/崎出浩隆さん 真優さん



他にはない自分たちのやり方で
身近な“町のお豆腐屋さん”になりたい


夢を語るのは簡単ですが、実際に動き出すには勇気や思い切りが必要。家族がいたり、未知の世界に飛び込むなら、なおさらかもしれません。ところが、その高いハードルをあっさり飛び越え、夢を実現させた人がいます。2006年11月28日にオープンしたばかりのお豆腐屋さんのご夫婦に、お話しを伺いました。

─なぜまたお豆腐屋さんを?
 建設会社でサラリーマンをしてたんですけど、もともと商売に興味はあったんですよ。進学で京都に出てきて以来ずっと住んでるので、京都で京都にちなんだ商売ができたらな、ということで豆腐を選びました。お豆腐と言えば京都ってイメージありますよね。他に漬け物や和菓子なんかも候補にあったんですけど、自分がお豆腐を好きだっていうのが、最後の決定的な理由でした。

─老舗もたくさんあるわけですけど、抵抗はなかったんですか
 それはやっぱりありましたね。でも、「京都で豆腐」は老舗が多い分、新しいことをやっていこうとする人が出にくかったり、老舗でも後継者がいなくてどんどん店をたたんでいたり、若い人があまりいないという状況があったので、逆にやり方次第ではチャンスがあるかな、とも思いました。

─準備期間はどのくらい?
 丸2年ですね。最初の1年で、いろんな候補の中から豆腐屋を選びました。その後半年間、あるお豆腐屋さんで修行して、あと半年間はいろんなお豆腐屋さんを転々と見学や体験させていただいて、ちょっとずついろんなお豆腐屋さんのいいところを覚えていった、という感じです。

─途中でモチベーションが下がることはなかったんですか
 修行の間は、怖さとかしんどさとかもわからずに今以上に夢だけを見ている状態で、いろいろ見て
「自分だったらこうするのにな」なんて思って、どんどん夢が膨らんで一番楽しい時期でしたね。

─作り方って簡単に教えてもらえるんですか
 そうですね、意外と。お豆腐って、大豆と水とにがり、つまり凝固剤ですけど、それしか使わないので、基本的にはみんな作り方は一緒になるんですよ。原料が3つしかなくて作り方も同じなのに、いろいろ味が違うんですよ。ということは逆に、どれだけ見て真似しても同じものは作れないということです。大豆の水のつかり方ひとつでも、気温や水温が違ったら変わってくるんですよ。だから、僕が作るお豆腐でも、毎日違う味になってしまいます。それくらい、簡単に見えるけど奥の深いものですね。

─じゃあ今はお豆腐一色の日々?
 毎日、いいお豆腐作りたいって考えて作ってるんですけど、毎日、思った豆腐ができないので、じゃあ明日はああしようこうしようって、毎日が試行錯誤の繰り返しですね。

─『こだわりとうふ』とありますが…
 まず豆は、甘み、香りの豊かな滋賀県産丸大豆「大鶴」だけを使用しています。通常よりもふんだんに使ってるので豆乳が濃いんです。市販の豆乳が苦手な方でも、うちの豆乳ならって言ってもらってます。
 凝固剤には天然にがり(伊豆大島産海精にがり)って言って、海水から取れたそのままのにがりを使ってるんですけど、実際に今、お豆腐屋さんでそのにがりを使っているところは少ないんですよ。きれいに固まらないし、同じ大豆の量でもできる豆腐の量が少ないし、非常に高価なので。けど、味はその分おいしいです。豆本来の味が引き立って、口の中に豆のおいしい香りが残ります。だからお豆腐をそのまま食べていただいても、豆の味だけで美味しく食べられますよ。
 その他に、味や作業効率をよくするための添加物もいっぱいあるんですけど、効率が悪くてもそういうものは入れずに、安心して美味しく食べてもらえるために、日々努力、研究して作っています。

─じゃあやっぱりおすすめはお豆腐?
 もちろんお豆腐はおすすめなんですけど、あえてすすめるなら揚げ物ですね。うす揚げ、絹揚げ、ひろうすなんかは、自分で言うのもなんですけど、おいしいですよ。さっきも言ったように、味の濃いお豆腐に天然にがりを使っているので、それを揚げるともっと豆の香ばしさが際立つんですね。おいしいですよ。

─今後の目標は?
 近いうちに移動販売を始める予定なんですよ。移動販売と言っても昔ながらのリヤカーでの販売じゃなくて、車で。たぶん京都市内では一台もないと思うんですけど、陳列棚を載せた車でラッパ鳴らして移動販売をする予定なんです。それが広く受け入れられるように、ラッパの音が聞こえたら「あ、崎出屋さんや」とわかってもらえるような、「移動販売の崎出屋さん」と言ってもらえるような、そんな身近な町のお豆腐屋さんにしていきたいですね。


■プロフィール
とうふ師/崎出浩隆さん 真優さん
●崎出浩隆(右)
 1977年11月1日生まれ/29歳/福井県出身。京都在住。
 '05年脱サラして豆腐屋を目指すべく修行、勉強を始める。
 2006年11月28日 京都市北区に「こだわりとうふ崎出屋」を開店。
 本物の豆腐を求めて毎日が勉強中。
●崎出真優(左)
 1980年3月29日生まれ/26歳/京都市出身。
 主に揚げ物を担当。毎日難しい手揚げに悪戦苦闘。
【こだわりとうふ 崎出屋】 京都市北区大宮田尻町88
TEL/FAX 075-492-1278、営業時間/10:00~18:00、定休日/毎週月曜・第1日曜
※CIAO MAGAZINE 2007年3月号より抜粋

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